青森地方裁判所 昭和44年(わ)66号 判決
本店所在地
青森県十和田市穂並町二番六二号
上北建設株式会社(昭和四四年三月一五日商号変更、変更前の商号上北土木建築株式会社)
右代表者
代表取締役 田島弘次
本籍
青森県十和田市穂並町一番地
住居
同県同市同町二番六二号
会社役員
田島弘次
大正一二年一月七日生
右被告会社および被告人に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官佐藤勝出席のうえ審理し、つぎのとおり判決する。
主文
被告会社を罰金一〇〇万円に
被告人を懲役六月に
各処する。
但し本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社は、青森県十和田市穂並町二番六二号に本店を置き土木建築業を営む資本金一、二五〇万円の株式会社であり、被告人田島弘次は右会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は同会社取締役沢目義雄らと共謀のうえ、被告会社の業務に関し、法人税を免れることを企図し、会社所得の一部を除外して架空の工事原価等の支払にあてた如くこれを計上し、その分を簿外預金としたり交際費をねん出したりする等の不正の方法により同会社の所得を秘匿したうえ
第一、昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一、一八五万二、八七七円あつたのにかかわらず、昭和四一年五月三一日十和田市西三番町一番三四号所在の所轄十和田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四七六万三、四九四円であり、これに対する法人税額が一一七万二、五二〇円(申告書は誤算であつて右所得金額に対する正当税額は一二一万五、三五〇円である)である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額三八一万二、五〇〇円と右申告税額一二一万五、三五〇円との差額二五九万七、一〇〇円(端数五〇円は切り捨て)を納入期限に納付しないで逋脱し
第二 昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二、四六七万三、五二二円あつたのにかかわらず、昭和四二年五月二九日前記十和田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三二七万八、七二八円であり、これに対する法人税額が七二万三、三一〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額八一四万一、〇〇〇円と右申告税額との差額七四一万七、六〇〇円(端数九〇円は切り捨て)を納入期限に納付しないで逋脱し
第三 昭和四二年四月一日から昭和四三年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一、五三六万八、六九二円あつたのにかかわらず、昭和四三年七月一三日前記十和田税務署において、同税務署長に対し、所得金額が五一八万八、二九九円であり、これに対する法人税額が一三四万一、九〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額四八六万八、八〇〇円と右申告税額との差額三五二万六、九〇〇円を納入期限に納付しないで逋脱し
たものである。
(証拠の標目)
判示各事業につき
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書三通および同人の収税官吏に対する質問てん末書一七通
一、沢目義雄の検察官に対する供述調書三通および同人の収税官吏に対する質問てん末書三四通
一、収税官吏作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面(昭和四四年押第一九号の四)-判示第一ないし判示第三の各事業年度に相応する各説明資料参照(特に訴因と直接関係する部分としては各事業年度の修正貸借対照表および修正損益計算書の記載による)
一、収税官吏作成の「脱税額計算書の調査額の計算方法等について」と題する書面
(右各事業年度の犯則税額を算出するについての税法各関係法令および右税額の算出方法を記載したもの)
一、収税官吏作成の「簿外預金等の調査書」「簿外預金等の受取利息調査書」「架空工事原価調査書」「架空原価等調査書」と題する各書面(一括して別綴となつているもの)-(右事業年度の不正行為の内容を各勘定科目別に分類調査のうえこれを集計したもの)
判示第一の事実につき
一、押収にかかる被告会社の昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日までの事業年度の確定申告書(昭和四四年押第一九号の一)
一、収税官吏作成の昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日までの脱税額計算書
判示第二の事実につき
一、押収にかかる被告会社の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの事業年度の確定申告書(昭和四四年押第一九号の二)
一、収税官吏作成の昭和四一年四月一日から昭和四二年三月三一日までの脱税額計算書
判示第三の事実につき
一、押収にかかる被告会社の昭和四二年四月一日から昭和四三年三月三一日までの事業年度の確定申告書(昭和四四年押第一九号の三)
一、収税官吏作成の昭和四二年四月一日から昭和四三年三月三一日までの脱税額計算書
(法令の適用)
被告人の判示第一ないし第三の各所為は法人税法第一五九条第一項刑法第六〇条にそれぞれ該当するので、所定刑中懲役刑を各選択し、以上は同法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文第一〇条により犯情最も重いと認める判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期範囲内で被告人を懲役六月に処し、情状により同法第二五条第一項を適用して本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
被告会社については、その代表者である被告人か同会社の業務に関して判示各違反行為をなしたものであるから、法人税法第一六四条第一項により所定の罰金刑を科するが、右は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四八条第二項により右罰金の合算額の範囲内において被告会社を処断すべきところ、同会社はすでに三、〇〇〇万円に達する逋脱税加算税を納付し、今後再びこのようなことのない様留意する旨代表者である被告人において改悛の情をのべているし、会社の経営も右の次第で運営資金に窮するにいたつている状況もうかがわれるので、罰金額は一〇〇万円を相当とする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 佐々木一雄)